淡路島の「すぎの家」　〜家づくりへの願い〜　　　

「モデルハウスになる家をどんな家に？」という問いかけからのスタートでしたが、私たちの願いはひとつ、
それは自然素材に囲まれた家づくりを実現させることでした。そんな思いを持つようになったのは、家の
リフォームによって子どもたちの体調が変化したことがきっかけでした。目がチカチカする、体中に湿疹が
できる、今話題になっているシックハウスの症状を目のあたりにし、今まで目に見えない化学物質に無頓着
でいたことを反省しました。やがて家の中から石油系化学物質が少しずつ姿を消し、食品をはじめシャンプ
ー・リンス・洗剤なども自然派のものに変わっていきました。ですから、新しく建てる家は、できる限り自
然素材にこだわり揃えていきたいという思いがありました。　
　
　

さて、家づくりへの願いが明快になったところで、モデルハウス見学にあちこち出かけました。神戸のログ
ハウス展示会場では、山小屋にいるようなくつろぎ感を与えてくれるログハウスや、また和風感覚を取り入れ
たログハウスもあり、木の香りに癒やされました。家の中央に暖炉があったり、天窓から星空☆彡が仰げるよ
うなしかけがあったりして、田舎暮らしのよさがゆったりと満喫できるような家でした。


そして、次に行ったのが徳島県阿南市のゆたか野展示場にある「板倉の家」です。杉ですっぽりとおおわ
れ、木の香りに満ちていて深呼吸をしたくなるような家でした。材料をすべて調達している中千木材の社長さん
に初めてお会いしました。杉の話、家づくりの話、そして「板倉の家」の設計に深く関わってこられた安藤先生
のことについて熱く語られていた中千社長さんの姿が、とても印象的でした。

　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
今度は、滋賀県まで足をのばし、「びわこ板倉の家」を見学しました。国産材を使い、伝統技法・構法で
建てる家づくりを模索しているときに、徳島すぎで建築された「板倉の家」を知った川島社長さん。その素晴ら
しさを滋賀県でも広めたいと会社を立ち上げたそうです。社長さんの案内で、見学会をしたばかりの家、既に住
んでいる家、建築中の家、そしてケーキ屋さん、いろいろな「板倉の家」見学することができました。石油系材
料を全く使わない自然派志向の家にこだわり、施主さんと常に向き合いながら家づくりを行なっている姿勢に、
家づくりの原点を見た思いがします。


ログハウス、板倉の家、どちらをとっても自然素材を使った家づくりができますが、「板倉の家」を選んだ理由は
すべて国産材で家づくりができること、夏すずしく冬場も温かい暮らしができること、伝統構法による大工技術が
生かされることなど、より多くの魅力を感じたからです。そして、何より心を動かされたのは、ゆたか野展示場に
ある「板倉の家」で宿泊体験です。まだ肌寒い3月の頃でしたが、素足でもひやっとしない杉の床板のあたたかさ
を感じ、高野槙のお風呂で木の息吹を感じ、熟睡した次の日には、身も心も洗われ清々しい気分になりました。


「木に包み込まれた空間の中で、元気をとりもどすことができるような家をつくりたい」
そんな願いが実現し、淡路島に「板倉の家」が完成しました。基礎工事から始まり、材料の調達、プレカット、上棟、
大工工事、左官工事など実にたくさんの皆様にお世話になりました。心よりお礼申し上げます。大勢の皆様の知恵と
心、そして大工技術が結集された「あわじ板倉の家」。すぎのもつ素晴らしい特性を五感で感じていただき、伝統構
法について知っていただく機会となることをうれしく思います。私たちの家づくりがモデルハウスの見学からはじま
ったように、このたびの住宅見学会が、これからの家づくりについての何らかの手がかりになれば幸いです。